渡島地方の松前神楽

平成25年 鹿部稲荷神社本祭 2013

2013年7月9日に取材したのもです。

宵宮祭の次の日は、渡御祭が行われる行なわれました。1日で鹿部の町を練り歩きます。
宵宮祭の神楽奉納よりも座数(舞楽の数)が多く行われるのが本祭です。神楽に熱心な神職の居る所は、神楽の座数も多く、神楽達者の神職も助勤(お手伝い)にいらっしゃるので、いつも楽しみにしている場所であります。

本祭ということで、例祭の中で一番大切な神事が行われるのが「本祭」ということですが昼間とあって、参拝者も多くはないなという感じではあります。神事が行われ、松前神楽でもある「鎮釜湯立式(ちんかまゆたてしき)」から入ります。

鎮釜湯立式とは、鎮火祭という火を鎮める神事であります。釜でお湯を焚きホムスビノ神とミズハノメノ神をお祭りし、火(霊)を祓い清め、釜に向かい神歌を奏で鎮釜・鎮火を行います。また、湯笹で四方を拝し祓い清め除災招福を修します。作物・漁獲量の吉凶を占う神事であり、松前神楽三十三座の中に十二座入っている神事です。

鹿部稲荷神社 2013本祭 鎮釜湯立式
鹿部稲荷神社 2013本祭 鎮釜湯立式
鎮釜湯立式(上:釜清め 下:湯上げ)

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今回は写真はありませんが、鎮釜湯立式に使われた笹湯は祓われて外症状を治し、飲んで内症状を良くすると言われております。
振る舞われたら、是非ご賞味下さい。笹のほんのりした香りがします。

松前神楽の舞楽に入ります。
今回行われた舞楽は、榊舞(さかきまい)、鈴上舞(すずあげまい)、二羽散米舞(にわさごまい)、翁舞(おきなまい)、三番叟舞(さんばそうまい)、山神舞(さんじんまい)、神遊舞(かんあそびまい)、荒馬舞(あらうままい)、注連祓舞(しめはらいまい)、十二の手獅子舞・五方(じゅうにのてししまい・ごほう)、十二の手獅子舞・面足獅子(じゅうにのてししまい・もくたりしし)の十一座が行われました。

幣帛舞(みてくらまい)、榊舞(さかきまい)、祝詞舞(のりとまい)とも云います。
その神社の宮司が朝夕玉垣内に参進して、神域を祓い清め、神拝して御幣を奉るという、神職の神明奉仕の姿を表した舞いであります。函館と近郊の町で行われる際には、松前神楽奉納となる時、斎主(その神社の宮司)が最初に舞われる舞いです。

鹿部稲荷神社 2013本祭 榊舞
榊舞(さかきまい)、幣帛舞(みてくらまい)、祝詞舞(のりとまい)

鈴上げ(すずあげ)、神子舞(みこまい)、乙女舞(おとめまい)とも云います。
鈴と扇を持ち、松前神楽の中で最も優雅な舞いです。天女の天降るさまを舞う神子(みこ)の祝福の舞いです。

鹿部稲荷神社 2013本祭 鈴上舞
鈴上舞(すずあげまい)

二羽散米舞(にわさごまい)、庭散米とも書き、鳥名子舞(とりなごまい)とも云います。
鶏は天の岩戸開きに暗黒の世より光明の時を告げ、世の始まりに地を踏み固めた瑞鳥であるとされています。雌雄二羽の鳥形の冠を頭に冠し、羽根には雄は瑞雲つまり天を表し、雌は海の波を形どり地を表して、雌雄親しみ和合して、世の中が平和である様を表し、神の恵みの米をまき散らし、千五百秋の瑞穂の国の五穀豊穣を祝う舞いです。この舞いは、舞楽の系統を引いています。

鹿部稲荷神社 2013本祭 二羽散米舞
二羽散米舞(にわさごまい)

翁舞(おきなまい)は、面白く背が高く心柔和な老翁が、額にしわがよっても身体堅固で幾星霜を経る間に、身分が高い位に登った姿で、舞中に願意を言葉に表し、息災延命、立身出世を祝って舞う福禄寿の備わった最も目出度い舞いです。松前神楽の中で、一番舞いが難しいと云われている舞いです。

鹿部稲荷神社 2013本祭 翁舞
翁舞(おきなまい)

三番叟舞(さんばそうまい)は、背が低く、顔が黒い精力絶倫にして健康長寿、正道徳行の翁が、才智多い子孫に恵まれ自身もまた長寿であることを喜び舞う、家門の隆昌、子孫の繁栄を祝福した舞いです。

鹿部稲荷神社 2013本祭 三番叟舞
三番叟舞(さんばそうまい)

山神(さんじん)舞は、奥山の榊葉を持ち山神を表し、海鳥のしぐさを真似て山神にご覧になってもらい、おなぐさめ申し上げるというものであります。山伏神楽系統の神楽の様子がみられます。

鹿部稲荷神社 2013本祭 山神舞
山神舞(さんじんまい)

神遊舞(かんあそびまい)、天皇遊舞(てんのうあそびまい)とも云います。
二人の武人が弓矢を持ち、四方の悪魔を退散し、正しい心に返す意味の舞で、松前藩の威徳を内外に示し、蝦夷地鎮定、天下泰平を祈願した舞であります。この舞は、松前藩主6代矩広(のりひろ)公の作品だと伝えられています。

鹿部稲荷神社 2013本祭 神遊舞
神遊舞(かんあそびまい)

荒馬舞(あらうままい)、松前遊(まつまえあそび)、正前遊舞(しょうぜんあそびまい)とも云います。城内神楽の神楽修行の際に、たまたま藩主の機嫌が悪くこれを直さんと考え馬が好きな藩主の為に、馬術の様子を即興的に創り演舞したところ大変喜び、機嫌を直したと云います。

鹿部稲荷神社 2013本祭 荒馬舞
荒馬舞(あらうままい)

注連祓舞(しめはらいまい)、〆引(しめひき)、七五三祓舞(しめはらいまい)とも云います。白扇を四方四隅中央を祓い、真剣を抜き天井に十文字の縄を張った注連縄を切り払い、悪魔退散、国土安穏、千秋万歳を祝して舞われる舞いで、その神社の斎主(その神社の宮司)が舞う舞いです。切り祓われた紙垂(しで)は安産、火難除のお守りとされています。

鹿部稲荷神社 2013本祭 注連祓舞
注連祓舞(しめはらいまい)

十二の手獅子舞・五方(じゅうにのてししまい・ごほう)
十二回手が変わるというので、十二の手獅子舞と云われています。一年十二ヶ月を形どり、獅子幕も十二反使用するを本格とするのであると云われています。五方とは、東西南北と正中(真ん中)を祓い固め蝦夷鎮定、国土安穏を祈る様を表しています。

鹿部稲荷神社 2013本祭 十二の手獅子舞・五方

十二の手獅子舞・面足獅子(じゅうにのてししまい・もくたりしし)
コミカルな楽に変わり猿田彦が登場し、暴猛な大獣獅子を手玉にとって遊び戯れ、平和な世の中を招く悪魔降伏の舞いであります。本来、相撲とったりはしません。

鹿部稲荷神社 2013本祭 十二の手獅子舞・面足獅子
十二の手獅子舞・面足獅子(じゅうにのてししまい・もくたりしし)

今年も鹿部稲荷神社で、無事に松前神楽を見られました。
座数が多いので、多くの舞楽を見たければ鹿部稲荷神社の本祭に足を運んでみてはいかがでしょう。

毎年見させてもらう松前神楽は、素晴らしいです。
私は様々な神社での神楽を見てくると、見えてくるものがあります。本来の神楽の中では、行われないような事が行われています。滑稽にしていい所と厳格にしなければならない所を理解して欲しいと感じております。

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