松前神楽形式「松前式(風)」

松前神楽形式「松前風(式)」は、基本となるものだと思われます。
御城神楽と呼ばれていた時代に近いだろうと思われますが、一般的に楽しいように、見やすいようにと工夫されたとも見られる舞楽もあると思われます。

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松前神楽神楽形式

御城神楽で行われた、神楽に関しての記録(舞い方、笛の吹き方)は、残されておりません。
佐々木家から伝承された神楽形式から各地に伝承され、舞い方や、楽も多少の変化をしていき、現在の各ブロックに伝承と多少の変化を遂げ、地元で育まれて残ってきたものと判断されると思われます。神楽が伝承されれば、年数を重ねるとやり易いようにゆっくりと変化していくのが、郷土芸能や民間の行う神楽ではよくある傾向だと感じます。

敢えて形式を分けるなら・・・

松前神楽形式大きく分けてこの3つ存在します。
函館市をはじめとした各町で行われている「渡島式(函館式とも呼ばれています)」、松前町をはじめとした各町で行われている「松前式(福山式とも呼ばれています)」と、福島町・小樽をはじめとした各町で行われている「福島式」とあります。
「函館式(風)」・「渡島式(風)」と呼ばれている形式については、松前式から手直しをして新たに編集された神楽形式であります。(詳しくは、函館式を参照ください)

平成29年 松前神社 本祭 松前神楽 三番叟舞
松前神楽「三番叟」

松前神楽形式「松前式(風)」

松前神楽の形式について紹介したいと思います。松前神楽のお膝元・松前連合保存会(神職)に伝わる神楽形式です。
御城神楽で行われていたであろう神楽形式に近いものと思われます。
御城神楽が行われる年には、神社を司っていた三家(白鳥家・永井家・佐々木家)のうち、佐々木家がこの神楽舞に関しての記録があり、想定すると主に神楽に関して勤めていた家柄と思われます。
書籍に記録されたのが、昭和11年に発行された「松前神楽」は、主に当時の函館八幡宮宮司が中心となり記録して集められた資料であります。写真でも残されており、当時からこの神楽を記録しようと調べられた貴重な資料の一つであります。この冊子を膨らませて製作されたのが、松前町教育委員会で製作された冊子で昭和39年に発行された「松前神楽」であり、この本が現在の松前ブロックの基本となる舞い方や、神歌などが収められており、松前神楽(松前式)教科書的存在となっております。

松前神楽,教本

清部地区の松前神楽について

松前ブロック連合保存会の中に所属している、清部松前神楽保存会は、神職が行う松前神楽とは舞い方も楽(笛・太鼓)が、異なるところが多いです。大きく異なる所と感じられるところは、笛の音色に関しては、神職が行う松前神楽の吹き方とは異なります。基本ベースは同じに感じますが、笛のあや(よく聞こえるように工夫された技巧的な、飾った吹き方)は省略されたような吹き方をすると思われます。
舞楽に関しても、伝承されている神楽舞も全てではないようです。注連祓舞や、荒馬舞、御稜威舞、獅子の鈴上、鎮釜湯立式などは伝承されていないです。

清部の松前神楽は、明治三年(1872)舞楽の為に組織された現在で言う青年団のような団体が作られ、はじめて組織され、神社により披露されたという記録されています。地元の人が行う松前神楽で当時の神楽を教わった、徳山大神宮社主・常磐井榮太氏や、江良八幡神社社主・佐々木二見氏らにより伝承された神楽であります。

清部八幡神社 元旦 神楽奉納 松前神楽 四箇散米舞
清部の松前神楽

松前式(風)特色

現在は松前町内の神社を中心に、他の町でも行われているのを見ることができます。
目で見た簡単な見分け方は、衣装(松前藩の紋章付き)を着けて神楽が行われるかという点です。
松前町や渡島地方周辺の町の神社で行われる例祭で行われる神楽(福島町を除く)で、長烏帽子、鬼狩衣、帯を着用または使用して神楽が行われていれば、松前式(風)に近いものと思われます。

松前式で例祭に行われる神楽

例祭(宵宮祭・本祭)で行われる主な神楽は、下記の通りです。取材した先の神社で多く見られたケースの中で書いているので、絶対ではないということもありますので、ご了承ください。

鎮釜湯立式(ちんかまゆたてしき)十二座

・本祭に執り行われる
1 惣神拝(そうしんぱい)★
2 修祓(しゅばつ)開扉・献饌(けんせん)◯
3 四方拝(しほうはい)★
4 神楽初(かぐらそめ)◎
5 釜清め (かまきよめ)
6 正神楽 (しょうかぐら)
7 注連脱(しめぬき)☆
8 祝詞 (のりと)
9 遊拍子 (ゆびょうし)☆
10 湯立 (ゆたて)
11 湯上 (ゆあげ)
12 恵美須加持(えびすかじ)★

★=惣神拝(そうしんぱい)などは、拝礼のみのものであると思われるので省略
☆=松前ブロックではあまり行われていない
◯=神事の際に行われている
◎=神楽が行われる際に行われている

現在の通常行われている鎮釜湯立式は、「釜清め(かまきよめ)」から行われています。
5、6、8、10、11を行い、鎮釜湯立式が完了です。

上磯八幡宮 鎮釜湯立式 2013
鎮釜湯立式・湯立

主に行われる舞楽

宵宮祭は、五座程度の舞楽、本祭は七〜十座程度行われます。

・榊舞・鈴上げ・福田舞・利生舞(宵宮祭のみ)・二羽散米舞
・千歳・三番叟・翁舞・神遊舞・山神・注連祓舞・獅子舞(五方舞・佐々良)

と行われています。

滅多に見られない舞楽

特別な時しか行わない舞楽もあり、現在も伝承されていますが、見られる回数は少ないです。

・四ヵ散米舞・鬼形舞・兵法舞
・十二の手獅子舞、御稜威舞(みいつまい・獅子の上)・獅子の鈴上げ

鬼形舞・兵法舞は、基本的に松前ブロック連合保存会(神職)では秘曲とされていましたが、近年段々と行われている所もあるようです。
兵法舞に関しては清部保存会では通常的に行われております。

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