北海道の祭り、郷土芸能・文化、風習、伝説などを巡礼日誌です。松前神楽の取材も継続していきます。

良き候北加伊道

【北海道の神楽】鹿部町・鹿部稲荷神社本祭での松前神楽(平成29年)

2017年7月9日取材

毎年お伺いして神楽を見せてもらっている鹿部町鹿部稲荷神社です。今年は、宵宮には行けず、本祭のみ神楽を拝見しに来ました。

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鹿部稲荷神社・由緒

安永9年6月10日漁業守護神として松前藩領主松前道長公に請願。社殿の建築落成の上御霊代の御遷座祭を斎行する。文化3年7月8日社殿の腐朽により本殿拝殿再建落成の上御遷座。後鹿部村の産土神社と定め届出、鹿部稲荷社と号した。嘉永2年伏見稲荷神社より御分霊を戴き祭神とする。安政4年奥州箱館奉行所を経由日本惣本宮より正一位鹿部郡稲荷大明神安鎮之事の宜贈を賜り鎮魂祭を執行する。明治7年箱館郡役所を経由鹿部稲荷社午村社稲荷神社と御昇格の御指令を賜る。明治37年社殿の全面改築落成の上御遷座祭を斎行する。昭和元年渡島支庁経由鹿部稲荷神社を神饌幣帛料供進指定神社となる。昭和19年大修繕を行い同31年宮浜56番地より現在地に移転増改築する。その後社殿腐朽により全面改築をし総桧木材で権現造の社殿を建立し平成6年12月22日遷座祭、翌23日落成奉祝祭を斎行し現在に至る。

鹿部稲荷神社・祭神

倉稲魂命(うがのみたまのみこと)

 

鹿部稲荷神社本祭

松前神楽を見始めて、ここの神楽を見るようになりました。ここの神楽は、神楽上手な神職が集まると言えます。
松前神楽は神職が行う神楽です。最低でも笛・大太鼓・小太鼓・手拍子・舞手の4・5名が必要であると思われます。道南の神職は、近隣の町内で助け合いでお祭りを行います。自分たちの受け持ちの神社に、呼んで祭式や神楽奉納を行います。どの神社もお祭りを執り行う際に、神職がいなくては松前神楽ができないので、神職は毎年行くところが決まっております。大抵、毎年のように呼ばれるところは余程のことがない限り助勤の声がかかります。
今までのお祭りが滞りないように、古くから助け合いながら成立しています。

本祭で行われること

今までの解説であれば、「神事が行われ・・・」と書いておりますが、行われていることを知らなければと思います。

本祭に行われる行事は、だいたい下記のような流れで行われます。

・開式の辞
・修祓(しゅばつ) 神職が神前に於て祓詞(はらいことば)を奏上し、大麻(おおぬさ)ですべてを祓い清める。
・開扉(かいひ) 御扉を開けます。
・献饌(けんせん) 神前にお供え物をする儀式。
・祝詞奏上(のりとそうじょう) 神職が神前に祝詞を奏上する。
・斎主玉串拝礼(さいしゅたまぐしはいれい) そこの宮司が務めてその斎主が神前に進んで玉串を奉りて拝礼します。
・玉串奉奠(たまぐしほうてん) 玉串は、この1年を祈ってその心を神に捧げるものです。
・松前神楽奏上 鎮釜湯立式を行う所は、湯立神事を行い、その後に舞学を行います。
・撤饌(てっせん) お供え物を下げる儀式
・閉扉(へいひ) 御扉を閉めます。
・閉式の辞

松前神楽は、本祭の最後の方に行います。祭式の中に組み込まれている松前神楽ですので、このような形になっております。

松前神楽・鎮釜湯立式

神事が終わると、鎮釜湯立式(ちんかまゆたてしき)が行われます。

鎮釜湯立式とは、鎮火祭という火を鎮める神事です。釜でお湯を焚きホムスビノ神とミズハノメノ神をお祭りし、火(霊)を祓い清め、釜に向かい神歌を奏で鎮釜・鎮火を行います。また、湯笹で四方を拝し祓い清め除災招福を修します。この笹湯は祓われて外症状を治し、飲んで内症状を良くすると言われております。また、作物・漁獲量の吉凶を占う神事であり、松前神楽三十三座の中に十二座入っている神事です。

最初に行われるのが、湯立神事の「釜清め」です。「祝詞」「湯立」「湯上」が行われます。

松前神楽舞学

今回行われた神楽舞は、榊舞、福田舞、二羽散米舞、翁舞、三番叟、荒馬舞、神遊舞、山神舞、注連祓舞、十二の手獅子舞五方・面足獅子の十座行われました。

榊舞(さかきまい)

最初に行われる舞学は、榊舞(さかきまい)です。
幣帛舞(みてくらまい)、榊舞(さかきまい)、祝詞舞(のりとまい)とも云います。その神社の宮司が朝夕玉垣内に参進して、神域を祓い清め、神拝して御幣を奉るという、神職の神明奉仕の姿を表した舞いです。函館と近郊の町で行われる際には、松前神楽奉納となる時、斎主(その神社の宮司)が最初に舞われる舞いです。

福田舞(ふくだまい

福田舞(ふくだまい)、跡祓舞(あとはらいまい)とも云います。跡祓舞(あとはらいまい)は、宵宮祭で獅子舞を行わない神社で、一番最後に行うことから跡祓(あとはらい)とも云います。四方の神々を拝し、祓い清めて干ばつ、暴水、火難の災いを除き、五穀豊穣を祈願する舞いです。

二羽散米舞(にわさごまい)

二羽散米舞(にわさごまい)、庭散米とも書き、鳥名子舞(とりなごまい)とも云います。鶏は天の岩戸開きに暗黒の世より光明の時を告げ、世の始まりに地を踏み固めた瑞鳥であるとされています。雌雄二羽の鳥形の冠を頭に冠し、羽根には雄は瑞雲つまり天を表し、雌は海の波を形どり地を表して、雌雄親しみ和合して、世の中が平和である様を表し、神の恵みの米をまき散らし、千五百秋の瑞穂の国の五穀豊穣を祝う舞いです。

翁舞(おきなまい)

翁舞(おきなまい)は、面白く背が高く心柔和な老翁が、額にしわがよっても身体堅固で幾星霜を経る間に、身分が高い位に登った姿で、舞中に願意を言葉に表し、息災延命、立身出世を祝って舞う福禄寿の備わった最も目出度い舞いです。

三番叟(さんばそう)

三番叟(さんばそう)は、背が低く、顔が黒く、精力絶倫にして健康長寿、正道徳行の翁が、才智多い子孫に恵まれ自身もまた長寿であることを喜び舞う、家門の隆昌、子孫の繁栄を祝福した舞いです。

荒馬舞(あらうままい)

荒馬舞(あらうままい)、松前遊(まつまえあそび)、正前遊舞(しょうぜんあそびまい)とも云います。城内神楽の神楽修行の際に、たまたま藩主の機嫌が悪く、これを直さんと考え馬が好きな藩主の為に、馬術の様子を即興的に創り演舞したところ大変喜び、機嫌を直したと云います。

神遊舞(かんあそびまい)

神遊舞(かんあそびまい)、天王遊舞(てんのうあそびまい)とも云います。二人の武人が弓矢を持ち、四方の悪魔を退散し、正しい心に返す意味の舞で、松前藩の威徳を内外に示し、蝦夷地鎮定、天下泰平を祈願した舞です。この舞は、松前藩主6代矩広(のりひろ)公の作品だと伝えられています。

山神(さんじん)舞

山神(さんじん)舞は、奥山の榊葉を持ち山神を表し、海鳥のしぐさを真似て山神にご覧になってもらい、おなぐさめ申し上げるというものです。

注連祓舞(しめはらいまい)

注連祓舞(しめはらいまい)、〆引(しめひき)、七五三祓舞(しめはらいまい)とも云います。白扇を四方四隅中央を祓い、真剣を抜き天井に十文字の縄を張った注連縄を切り払い、悪魔退散、国土安穏、千秋万歳を祝して舞われる舞いです。

十二の手獅子舞・五方(じゅうにのてししまい・ごほう)

十二の手獅子舞・五方(じゅうにのてししまい・ごほう)十二回手が変わるというので、十二の手獅子舞と云われています。一年十二ヶ月を形どり、獅子幕も十二反使用するを本格とするのであると云われています。五方とは、東西南北と正中(真ん中)を祓い固め蝦夷鎮定、国土安穏を祈る様を表しています。

十二の手獅子舞・面足獅子(じゅうにのてししまい・もたりしし)

十二の手獅子舞・面足獅子(じゅうにのてししまい・もたりしし)本来、御稜威舞、獅子の鈴上、五方と続き、コミカルな楽に変わると猿田彦が登場します。鎮まっていた獅子を手玉にとり、遊び戯れて平和な世の中を招く悪魔降伏ということです。

今年も神楽を拝見できてよかったです。直会にも呼んでいただき、感謝です。あまりゆっくりも出来なく、次の取材に行かなければならず、取り急ぎいただき、次の渡御の取材に向かいました。
また来年、神楽を見させてもらいます。

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第四回「祭りと神楽」写真展

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