檜山地方の神楽舞(松前神楽)

上ノ国町 砂館神社宵宮祭 2009

昨年も取材させてもらった神社である。北海道の神社の中でも古くからある神社である。
上ノ国の松前神楽は、久々である。
この砂館神社のある周辺は、洲崎館があったところである。
洲崎館とは、長禄元年(1457)の戦いで功を挙げた武田信広が上之国守護蛎崎季繁の養女である安東政季の娘を妻とし、同年築いた館である。この時、信広は「建国の大礼(けんこくのたいれい)」を行ったとされている。その後、信広は地の利と景勝を誇る夷王山の麓に勝山館を築き松前藩300年の基を作った。近年、中国銭2500枚、中国製青磁、白磁、国産の珠洲擂鉢や人骨が発見されている。館の構造については一部しか調査されていないのため不明なところが多いですが、建物の柱穴などが多数見つかっている。
毎年訪れているが、上ノ国で見る神楽舞はここしか見ていないので、今年は上ノ国八幡神社で行われる神楽舞を取材させてもらおうと思っている。宵宮祭であるが、門払いが行われ、その後宵宮祭が行われるようである。門払いで、新築の家で呼ばれると、家の中で神楽が行われるようである。宵宮祭目当てで、訪問していたので、そこまで見ることはできなかったが、機会があれば取材してみたい。
「神楽」ということで、行われたのだが、どう見ても松前神楽的に見ると、「神楽初(かぐらそめ)」だろうと思われる。名称は不明であるが、祭事の時、祝詞奏上の前に行われた。
江差の八大龍王神八江聖団でも「神楽」として、このような神楽初(かぐらそめ)が行われている。神楽初(かぐらそめ)とは、神楽舞が行われる前に、楽だけ神前に向けて行われるものであり、舞いは行われない。
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神楽初(かぐらそめ)
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上ノ国町で行われる神楽は、おそらく松前神楽の流れを組んでいる神楽であると思われる。名称まで詳しくはわからないが、取材していていろいろな人から聞いた話をまとめても、松前神楽のエッセンスがふんだんに入り、楽の方にも似たような所が見られる。
神楽舞の名称はわからないのだが、ここでは松前神楽の名前をそのまま使用して説明してきたいと思う。一部だけは、そこの名称を使用する。舞いの説明は付けないで紹介しようと思う。
宵宮祭で行われた神楽舞は、榊舞(さかきまい)、三番叟(さんばそう)、白面(しろめん)、天皇遊舞(てんのうあそびまい)、千歳(せんざい)、番楽(ばんがく)、獅子舞(ししまい)である。
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榊舞(さかきまい)
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三番叟(さんばそう)
檜山地方の神楽の「白面(しろめん)」と呼ばれている舞いは、名前のように白い面をして行われるが、舞いは松前神楽で言う「鈴上げ」のような舞いをするのである。白面といえば松前神楽では、「翁舞(おきなまい)」であるが、「翁舞(おきなまい)」という舞いもあるようである。
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白面(しろめん)
天皇遊舞(てんのうあそびまい)と呼ばれているのは、檜山だけと感じていた。江差では、「天之遊舞」と書くらしい。高くジャンプするタイミングを見て、シャッターを切ってみた。昨年はバックショットだったので、今年は正面である。
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天皇遊舞(てんのうあそびまい)
形も舞いも千歳(せんざい)であった。初めて見て、「これもあるのかぁ」と思ってしまう。上ノ国の楽人さんは、少ない中でいろいろな舞いを見せてくれる。感謝である。
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千歳(せんざい)
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番楽(ばんがく)
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獅子舞(ししまい)
泣く子供と獅子はよく似合う。大きい獅子頭を目の当たりにすると、泣き出す子供はいつ見ても、微笑ましい。
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獅子舞・五方(ししまい・ごほう)
江差・上ノ国とこの神楽が伝承されているのだが、舞いも多少変化している所もあるだろう。ビデオもない時代に、口伝でしか継承できないし、見て覚えるというスタイルで継承されて、独特の舞いの手が加わったりするのは、よくあることだろうと思われる。
この神楽が、担い手が少なくなり継承されなくなるのはもったいないことだ。この神楽舞は、昔は大成町、乙部町、江差町、上ノ国町と行われていたらしい。埋没した神職の後、新しい神職が赴任しても継承はされて行かなくなり、今では江差町、上ノ国町くらいだろうと考えられる。途絶えてからでは遅くなるので、この神楽をやってみたい若い人は、上ノ国八幡神社に問い合わせてもらいたい。
明日の本祭でも、神楽が行われるようなのでまた行くことにする。

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